企業で管理系業務に従事している方の中には、自社にAEDを設置する必要があるのか否か考えている方がいらっしゃるのではないでしょうか。またAEDを設置しなければいけないという基準があれば、設置検討を考えなければならないと思われている方も大勢いらっしゃると思います。現在、AEDの設置を義務づけた法律はなく、一部の自治体が条例で定めているだけで、今後は設置を義務づける条例が増えていくのではと想定されます。その中でAED設置に関する条例を制定している「横浜市」「茨城県」「千葉県」では、設置をしていないことに対して罰則規定こそありませんが、各施設や団体に対して努力義務を促しています。このように各自治体ともAEDの普及を後押しする動きは年々大きくなっており、今後その動きは更に高まってくることでしょう。

AEDを設置する目的とは?

昨今、AED(自動体外式除細動器)を福祉施設やスポーツ施設、駅などでも見かけるようになりました。先日、駅の改札口脇に設置され、誰もが気付くような場所だったので、非常に意識の高い駅だなと感心したことがありました。このように不特定多数の人が介在し、いつ何が起きてもおかしくないと思われる場所では誰もが気付くことのできるように設置されていることはとても大切なことだと思われます。また最近では一般企業でも導入するところが増えており、特に大企業が中心となって導入しているのを目にするようになりました。では、何故AEDを導入しなければならないのか、AEDってどうして必要なのか、各施設や団体がAEDを導入する意味ついて説明していきましょう。

「AED(自動体外式除細動器)」は、救命処置用の医療機器です。

不整脈の一種である心室細動は、心臓の筋肉が痙攣した状態を引き起こして血液を全身に送るポンプ機能を失わせます。それと同時に全身に酸素を送れないという状態にも陥れます。これが心停止の中でも多くの突然死をまねく症状とされ、一刻も早く細動を取り除く処置、つまりAEDなどの電気ショック機能によって除細動の処置が必要になります。心室細動を起こしている心臓に対して除細動の処置を取ることで、心臓の動きを正常なものにすることができます。一刻も早く処置を行うことが必要不可欠であり、傷病者がいる近くにAEDが設置されていることが非常に重要です。つまり、AEDが普及することは、より多くの人の命を救うことにつながります。またAEDは電源を入れると音声で操作方法を案内してくれます。電気ショックの要・不要はAEDが自動的に判断しますので、誤って電気ショックを与える心配はありませんのでご安心ください。

現在では1日に200人以上の方が突然の心肺停止によって病院に救急搬送されているようです。また突然心停止を起こした人の救命の可能性は時間とともに低下し、2、3分脳に酸素を供給できないことで脳へ深刻なダメージを与え、回復も困難になります。しかし、傷病者の近くに居合わせた我々がAEDによる除細動や心肺蘇生の救命処置を行うことで、救命の可能性は上がります。除細動による救命率はわずかな時間でも低下するとされ、傷病者の命を救うためには1分1秒でも早くAEDを使用することが求められるのです。

では実際にAEDがどの程度活躍しているか調べると、総務省消防庁「平成29年版救急救助の現状」では、およそ4.7%の心肺停止傷病者に対してAEDが使用されているようです。まだまだ一般的にAEDが使用されているとは言えないものの、AED が使用された場合の傷病者の生存率は圧倒的に高く、処置が行われなかったときと比べて生存率は遥かに高いといえます。

AEDの適正配置という考え方

AEDの適正配置に関するガイドラインでは、AEDの設置を望まれている場所が記載されています。

  • 心停止の発生頻度が高い場所(心停止を起こす人が多い)
  • 心停止のリスクがある競技やイベントが開催される(サッカーやラグビー、マラソンなどの心臓に負荷がかかるスポーツが行われる競技場や体育館など)
  • 心停止を目撃される可能性が高く、人が集まりやすい場所
  • 救急隊到着までに時間を要する特殊な場所(旅客機、遠隔地、離島など)

傷病者が心停止状態に陥った場合、救命率が1分間に7%~10%低下するといわれており、5分以内にAEDを使用することが推奨されています。この5分以内にAEDが使用できる状況を整えることを理想として、AEDの配置について検討されています。

がしかし、あくまでも「AEDの適正配置」ということでAEDの配置を義務付けられているわけではないので、今後も万が一の状況も起こりうることを意識しながら対応していかなければならないでしょう。

AEDの設置が推奨される具体的な場所とは?

AEDの設置が推奨される施設の具体例として、下に示す施設などが挙げられています。

  • 駅、空港
  • 旅客機、長距離電車・長距離旅客船などの長距離輸送機関
  • スポーツジムおよびスポーツ関連施設
  • デパート、スーパー、飲食店などを含む大規模な商業施設
  • 多数集客施設
  • 市役所、公民館、市民会館等の比較的規模の大きな公共施設
  • 交番、消防署等の人口密集地域にある公共施設
  • 高齢者のための介護・福祉施設
  • 学校(小学校、中学校、高等学校、大学、専門学校等)
  • 会社、工場、作業場
  • 遊興施設
  • 大規模なホテル・コンベンション
  • その他
  • 一次救命の効果的実施が求められるサービス
  • 島しょ部および山間部などの遠隔地・過疎地、山岳地域など、救急隊や医療の提供までに時間を要する場所

上記以外にも、アパート、マンションも設置が推奨される施設とされています。最近では実際にこれらの場所にAEDが置かれていることも珍しくなくなりました。しかし、24時間365日AEDが使用できる設置箇所はまだまだ少なく、いつでも利用できる環境整備が望まれています。会社内にAEDを設置することは従業員の命を救うことに役立つだけではありません。会社の入り口や玄関の前にAEDを設置して、前の通りを歩く人や、近所のもしものために備えておきたいと考える企業も増えてきており、このように屋外にAEDを置くことによって、地域貢献出来ると考えている企業が増えてきたのは対外的な広報活動にも役立つことでしょう。また、アパート・マンションなどの集合住宅についても同様のことがいえるでしょう。居住者と周辺住民、通りがかった人の命も助けられるかもしれません。学校の場合は多くの児童、生徒、学生、教員に加え、選挙投票時、避難時などに集まる人々の人命救助に役立つ可能性もあります。

AEDはどんな場所に配置すればいいのか

AEDの配置方法について、ガイドラインに考慮すべきことがまとめられています。ガイドラインに記載されているように、AEDが正しく配置されて効率よく活用されることが望ましいといえるでしょう。また、何故このように配置をしているのかという理解を深めることで、その他の場所でも動じずに対応が出来る場合もあるので理解を深めておきましょう。

1.心停止から5分以内に除細動が可能な配置

  • 現場から片道1分以内の密度で配置
  • 高層ビルなどではエレベーターや階段等の近くへの設置
  • 広い工場などではAED設置場所への通報によって、AED管理者が現場に直行できる体制
  • 自転車やバイク等の移動手段を活用した時間短縮を考慮

2.分かりやすい場所(入口付近、普段から目に入る場所、多くの人が通る場所、目立つ看板)

3.誰もがアクセスできる(カギをかけない、あるいはガードマン等、常に使用できる人がいる)

4.心停止のリスクがある場所(運動場や体育館等)の近くへの設置

5.AED配置場所に周知(施設案内図へのAED配置図の表示、エレベーター内パネルにAED設置フロアの明示等)

6.壊れにくく管理しやすい環境への配置

AEDを設置した後、どのようにAED管理すべきか

企業であろうが個人であろうが、設置者は日常点検を必ず実施しましょう。AEDの設置者は、設置したAEDの「点検担当者」を配置し、次に掲げる日常点検等を実施しましょう。AEDの日常点検の基本はセルフメンテナンスチェックの結果と消耗品の交換期限の確認です。AEDはセルフメンテナンスチェック機能により、常に使用できる状態かどうかが自己診断が行われており、異常があればAEDが知らせてくれます。導入後は設置施設にてセルフメンテナンスチェックの結果を毎日確認するようにしてください。

次に、AEDの設置情報の登録についての情報を共有し、いざという時の救命の効果を高めるために、AEDの設置情報の登録を積極的に行っていきましょう。厚生労働省では、一般財団法人日本救急医療財団を通じて全国のAED設置情報を分かりやすく公開し、AEDの積極的な活用を促しています。登録方法等につきましては、お手持ちのAEDの販売業者または日本救急医療財団へ問い合わせてみましょう。

AEDの設置で期待できること

AEDを設置することでどんなメリットがあるのでしょうか。ここでは個人で導入される方、組織で導入される方どちらにとっても有益であることをまとめておきます。購入時の参考としてご活用いただけると幸いです。

・安全管理の向上

AEDの操作方法は音声ガイドに従って操作するだけなので非常に簡単ですが、初めて利用する方にとっては戸惑うこともあるかもしれないので、定期的にAEDを試験作動させて万が一の時に備えると良いでしょう。なお、AEDは心臓に痙攣が起きているときのみ作動しますので、健常な人には使えませんのでご注意ください。また、一般の人がAEDを使用して人命救護した事例は年々増えており、社内や施設内における安全管理が向上します。特に、アパートやマンションなどは入居者のみならず、近隣の住民の安全管理のためにも設置するところが増えてきています。

・施設価値の向上

AEDが設置してあることで、万が一のときの安心感を持ってもらうこともできるため、施設の利用価値、存在価値も向上します。最近では新築のマンションだけではなく、販売用のリノベーションマンションや中古マンションにも設置されており、購入者の安心に一役買っているのを見かけるようになりました。逆に、いざというときに「もしもAEDがあったら……」と後悔する状況になることはできるだけ避けたいものですね。

・CSR効果の向上

企業はコンプライアンスや情報開示、環境問題への取り組みなどとともに、従業員や来客者、近隣にいる人の安全管理に努めて備えをすることで、相対的な社会的価値が向上します。もし会社でAEDを設置していない場合、その会社のリスクヘッジはどのようにしているのかなどと社会的に問われた時、何も答えることができないといったことは避けておきたいものですね。

・「AEDマップ」として整備・公開

日本救急医療財団はAEDが有効に利用できるよう設置情報の登録と公開の協力をAED設置者へお願いし、この情報を誰もが使えるように「AEDマップ」として整備・公開しています。AEDの設置場所を登録しておくことで、誰もが地図上でAEDの場所を確認することができるので、いざという時に役立てられることもでてくることでしょう。また市区町村によってはAED設置者に対して、設置、変更、廃止の際に届出を行うよう呼びかけているところもあるようです。届出のあったAED設置施設の内公表可能な設置施設を「AEDマップ」及び一覧表として掲載しているので、ぜひ一度目を通すと良いでしょう。

・救命処置に参加する人の増加

これまで、心肺蘇生は口をつけて息を吹き込む人工呼吸と胸骨圧迫の組み合わせとして広がってきましたが、近年、臨床研究によって胸骨圧迫のみの心肺蘇生が、人工呼吸も行う心肺蘇生と同程度に病院外での心停止患者を救命する効果を有することが明らかにされました。胸骨圧迫のみの心肺蘇生とAEDの使用だけであれば、一般の人でも簡単で覚えやすい上に、人工呼吸がないために心肺蘇生実施への抵抗が減り、救命現場に遭遇した際、救命処置に参加しようとする人が増えることが期待されます。

AEDを設置する上でのまとめ

周りの人がある日突然に心停止した際、AEDによる除細動を5分以内に行うことができる否かは生死に関わる重要な問題です。AED適正配置のガイドラインでは、心停止が発生しやすいと考えられる施設へのAED導入を推奨し、適正な配置の方法についても詳細な説明が記載されています。ガイドラインを参考にしながら、自社にAEDを設置する必要があるかどうか、また設置するのであればどこに配置すべきかを検討していくことが大切なことになってくるでしょう。一人でも多くの助けられる命を助けられるよう、意識を高めていくことが肝心です。