デパートや学校、駅などで見かけるAED。日本語では「自動体外式除細動器」といい、心臓に電気ショックを与えることで異常な拍動に強制的な力を加え、正しい動きに戻すための装置です。元々は医療従事者でなければ扱うことが許されていなかったAEDですが、2004年7月に、一般人でも扱えるようになりました。日本赤十字やAED販売会社などが行なっている使い方講習のサービスに参加した経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

一般人でも取り扱えるようになってから、急速に設置されていったAED。大きな施設に出かければ目にする機会も多く、今では当たり前の存在となっています。しかし、そのAEDを一般家庭に設置できることをご存知の方は意外と少ないのではないでしょうか。

いざという時に命を守ってくれる自動体外式除細動器。突然の心肺停止において、AEDを使用するか否かで生存率が大きく変わるというデータもあるのです。そんなAEDの設置に必要な費用や、家庭向きだから気を付けたいことなどを見ていきましょう。

AEDを家庭に設置するために必要なこととは?

(1)家庭向きAEDはどこで買えるのか

驚かれるかもしれませんが、AEDは、アマゾンや楽天などのいわゆるショッピングサイトで入手可能です。販売店も、オムロンのような有名ヘルスケアメーカーの他、低価格での販売を目指す個人店までさまざま。購入に際し特別な資格は必要なく、食品や日用雑貨などと同じように購入することができます。価格はキャリングケースが付いたシンプルなタイプのもので22万円程度から。手頃な価格とは言い難いですが、一般家庭向きとして手が届く現実的な価格で販売されており、ショッピングサイトの他、販売店から個人購入することも可能です。

家庭向きとして広く普及しつつある商品は、“サマリタン350P”と“CU-SP1”。販売会社によってセット内容やサービス内容が異なりますので、さまざまなネットショップをのぞいて確認してみましょう。

<購入店一覧(一部)>

(2)購入、レンタルサービス、リース・・・それぞれのメリットデメリット

一般家庭向きのAEDを設置するための方法は、購入かレンタルサービスのどちらかです。それぞれのメリットデメリットを把握して、自身に合った購入プランを考えてみましょう。

・購入のメリットデメリット

 メリット:

‐トータルのコストを安く抑えることができる。

‐新品を使用できる。

デメリット:

‐20~25万円程度のまとまった購入費用が必要

(※カードでの分割払いも可。詳細は販売店へお問い合わせください)

‐AEDの耐用年数、保証期間に合わせて買い替えが必要。

・レンタルサービスのメリットデメリット

 メリット:

‐月々料金を支払うため、コスト面での導入のハードルが下がる。

‐やはり設置の必要はない、別の機種にしたいと思ったら契約を終了することができる

 デメリット:

‐トータルで導入コストが高くなる。

それぞれにメリットデメリットがありますが、レンタルサービスよりも購入した方が導入費用を抑えることができるようです。

なお、リースは基本的に法人のみが対象となるため、個人利用は対象外となっています。しかし個人事業主として仕事をしている場合、購入対象になる可能性もありますので、詳細はリースのサービス業者へ直接お問い合わせください。 

(3)購入するときのポイント

デパートや学校など、人が集まる場所で見かけるAED。公共団体で購入し設置するイメージが強いですが、一般家庭向きのAEDを導入する際はどのような点に気を付ければ良いのでしょうか。

チェック①:価格

前項で少し触れましたが、家庭向きAEDはAmazonや楽天などのショッピングサイトで購入することができます。また、当店のような販売店に直接問い合わせ、購入することも可能です。

価格は、本体とキャリングケースが付いたシンプルなタイプであれば21~22万円ほど。家庭向きとして1台単位で購入する場合、販売価格の割引サービスはあまり期待できませんので、サマリタンのような、そもそも定価を低く抑えている機種を選ぶことをお勧めします。設置のための箱型のケースがセットになっているともう少し高額になりますが、家の中に設置する場合はかえって邪魔になってしまうかもしれません。

また、交換用パッド(設置4年後の交換用パッドの他、使用した後の交換パッドの補充も含む)がセットになって26万円ほどで販売されているタイプもあります。交換用パッドは1万円前後から。機種によってパッドの種類も異なりますので、購入した機種に合わせて必要なパッドの価格を販売店へお問い合わせください。

なお、心臓病を患っている方の場合、医療費の控除対象となる可能性がありますので、販売店へ医療費について事情を伝え、見積もりを依頼し詳細を確認しましょう。

チェック②:メンテナンス

一般家庭向きとして販売されている“サマリタン”という商品を例に挙げると、8年間の耐用年数のうち、消耗品の交換は導入4年後の一度だけ。手間はほとんどかかりません。「日々点検しないといざという時に使えないのではないか」と不安な気持ちを抱くかもしれませんが、本体自身が定期的にセルフチェックを行ない、緑色のランプで使用可能であることを知らせてくれるので安心です。

※サマリタンは、IP56の保護等級を取得

■準備は必要?設置した後のメンテナンスは?

(1)設置するために資格や申請は必要?

 2004年7月に厚生労働省からの通達により、自動体外式除細動器(AED)は一般市民でも使用することができるようになりました。一般家庭向きAEDを購入するにあたり、必要な資格も購入後の申請なども特にありません。

(2)設置した後のメンテナンスなど

耐用年数を終えるまでの間に、簡単なメンテナンスが必要です。しかし、本ページで取り上げているサマリタンのように、導入の足かせになっていたメンテナンス部分を大幅に改善した機種が販売されており、難しい対応は必要ありません。

<チェックすること>

チェック①:耐用年数は8年。

8年を経過すると、メーカー保証が終了し耐用年数を終えます。8年間使うことがなく時間が過ぎたのであれば、こんなに幸せなことはありません。新しいAEDの購入を検討しましょう。

チェック②:メンテナンスは、設置してから「4年後に一度」だけ。

消耗品の交換は4年に一度だけ(電極パッドは使い捨てのため、一度でも使用した場合は交換が必要です)。メンテナンスの負担は圧倒的に少ないと言えるでしょう。

特にこのサマリタンという機種は、「自動体外式除細動器(AED)」に対して持っていたイメージと異なっていた方も多いのではないでしょうか。サイズは20cm×18.4cmと想像するほど大きくなく、重さも1.1kg。小学生くらいのお子さんでも簡単に持ち運ぶことができる軽さであることが、救助の場面、そしてその後の生存率に大きな違いを生むのです。

■“いざ”という時のために・・・家庭向きのAEDを設置したほうが良い理由

(1)家庭内での死亡数は交通事故死の約4倍!家の中だからこそ油断せずリスクヘッジを

残念なことですが、日々多くの人が心臓が突然止まり突然死で亡くなっています。その数は、日本だけでも1年間で7万人ともいわれ、1日に換算すると毎日約200人もの大切な命が突然の死を遂げ、大切な家族との急な別れを迎えているのです。

心肺が停止した時、生存率に大きく関係しているのが“時間”です。心臓マッサージや自動体外式除細動器(AED)での蘇生を始めた時間の早さが生死を分けるのです。

119番をかけた後、救急隊が到着するまで何もしなかった場合、命が助かる人は1割にも満たないといわれています。心臓マッサージを行なうと蘇生率が少し上がりますが、それでも2割には届きません。それが、AEDを使用した場合、蘇生率は飛躍的に伸び、倒れた人の半数以上が助かっているのです。もし目の前で、家族が、友人が、大切な人が倒れてしまったとしたら。近くにいるあなただから救えるかもしれません。

現に、家の中での死亡者数は、交通事故での死亡者数に比べ約4倍ともいわれています。

“ヒートショック”という言葉を聞いたことがある方も多いと思いますが、ヒートショックとは特に冬場の寒い時期に暖かい部屋から冷えた浴室へと移動する際、その急な温度差で心臓に負担がかかり、血圧や脈拍に異常が起きてしまう現象のこと。このヒートショックに関連する死亡者の数は、2011年のデータで約1万7千人とのことでした。

このような統計から考えてみても、家庭における対応がどれだけ重要な意味を持つかお分かりいただけるかと思います。救急車が到着するまでの間にAEDを使用するかどうかで、生存率を飛躍的に上げることができるでしょう。

(2)AEDは急速に普及。一般家庭向きの設置数も伸びている

医療従事者ではない一般人でも自動体外式除細動器(AED)を操作できるようになったのは2004年のこと。「PAD」と呼ばれる一般人でも使用可能なAEDの設置台数は、2012年頃で累計台数約35万台となり、突然心臓が停止し倒れてしまった人たちの生存率の向上に大きく貢献しています。この設置台数は世界でもトップクラスともいわれており、特に日本において身近な存在になっています。また、当サイトでもご紹介しているサマリタンをはじめ、従来のAEDに比べて低価格かつメンテナンスも楽な一般家庭向きのタイプが登場していることから、今後さらに家庭での設置台数が増えていくことが予想されています。

■AEDそれぞれの特性と、家庭向きを購入するときに気を付けたいこと

(1)「使わない」で時間が経つのが一番。しかし「使わない」のと緊急時に「使えない」は大きく違う

AEDは「使わない」で過ごせるのが一番。日頃から健康に気を付け、心臓に負担をかけずに健やかに過ごしたいものです。しかし、前述したとおり家庭内での死亡率は高く、いつ心臓が停止し倒れてしまうかは誰にもわかりません。

避難リュックと同様、いつ来るかわからない“万が一”の時に備えて、定期的にチェックし準備を整えておきましょう。

チェック①:部品の交換時期は過ぎていませんか?

部品には交換時期があります。それぞれの機種の部品交換時期を日頃から把握しておきましょう。交換時期が過ぎている場合、販売店もしくはレンタル店にサービス内容を問い合わせ、いつでも正しく使えるように準備を整えましょう(※別記「準備は必要?設置した後のメンテナンスは?家庭にAEDを設置するためのルール」にて、「サマリタン」について詳しく解説します)

チェック②:耐用年数は過ぎていませんか?

機械には耐用年数があります。購入した年月日、使用期限の年月日をしっかりと管理しましょう。

チェック③:使い方を把握していますか?

AEDがしっかり音声や光、イラストで使い方をサポートしてくれるので、その手順通りに救助活動を行なえば問題ありません。しかし、いざという時に気が動転して、普段より理解力が下がってしまうのは当然でしょう。「あの時確認したから大丈夫」と思えるだけでも気持ちは落ち着くものです。少しでも冷静に救助活動を行えるよう、できればあらかじめ説明書を読んだり説明動画サービスを利用するなどして使い方を頭に入れておきましょう。

※なお、本体は毎日使用可能な状態にあるかセルフチェックを行なっており、緑色のインジケーターが点滅している状態であれば、いつでも使えることを表しています。

(2)突然死から救う!代表的なAEDの使い方例 

さまざまなタイプのAEDが販売されていますが、ここではサマリタンという機種を例に挙げて使い方を見ていきましょう。

  • 使用するのはこんな人を救助するとき

・意識を失っている

・正常な呼吸がない

・脈を打っていない

  • 患者の状態が上記に当てはまるか確認する

患者の耳元で声をかけ、肩を叩くなどして反応の有無を確認する

  •  119番で救急要請をし、サマリタンなどのAED装置を手元に運ぶ
  • サマリタンの緑ボタンを押し、機械を作動させる
  • 音声ガイドにて、接続されている電極パッドが成人向けなのか小児向けなのか確認

※患者が未就学児の場合、ピンク色の電極パッドを装着するのが望ましいが、ない場合は成人用でも可。

⑥ 音声ガイダンスによって説明される、以下の手順に添って救助を進める

  1.衣服をはだけさせる

  2.本体から緑のパッドを取り出し、パッドをフィルムからはがす

  3.パッドに書かれているイラストの通りに、患者の胸にパッドを装着する

  4.サマリタンが患者の状態を自動で確認。電気ショックが必要な状態か否かを音声で知らせる

  5.「電気ショックが必要です」と流れたら、音声の指示に従って本体中央のオレンジボタンを押す。電気ショックが行なわれる。

  6.音声と光に従い、心臓マッサージ(心肺蘇生)を行なう。メトロノームの音が流れるので、その音に合わせて胸を圧迫する。

  7.2分経過するとサマリタンが心臓マッサージ(心肺蘇生)を止めることを指示。心電図を自動解析、その後の処置方法が指示される。

  ※必ずしも電気ショックが必要ではないこともあるため、その場合は「電気ショックは必要ありません」と案内され、心肺蘇生を続けるよう促される。

⑦後日、パッドを新品と交換する。※使用済みパッドは自治体の規則に沿って廃棄する。

※参照:Youtube「次世代AED サマリタン™PAD 350P 取扱説明ビデオ」

(3)AEDは子供にも使える?持病があると使えない?女性に使用するときに気を付けたいことは?

AEDは、1歳未満の乳幼児にも使用可能です。小さな子どもは、細心の注意を払っていてもほんの少し目を離した隙に予期せぬ事故が起きてしまう可能性があります。健康だったはずの赤ちゃんが突然亡くなってしまう、乳幼児突然死症候群という疾患もあります。特に病院から離れた場所に住むご家庭にとって、緊急時にAEDが家にあるという安心感は大きいのではないでしょうか。子供に使用する際は、基本的に小児用パッドを使用しますが、ない場合は成人用でもかまいません。小さな子どもがいるご家庭では、子どもへの対応方法を事前に調べておくとよいでしょう。

次に持病がある場合ですが、心肺停止状態の緊急時の場合、AEDを使用できない病気はありません。基本的に、心肺停止患者のすべての人にAEDを使用することができます。しかし、倒れている人の中にも状態によって電気ショックが必要ない人もいますが、その場合はAEDが電気ショックは不要であることを知らせてくれます。緊急時だからといって慌てることなく、その判断通りに対応しましょう。

最後に、女性にAEDを使用する場合。下着(ブラジャー)はつけたままでかまいませんが、金属部分が電極パッドと触れないように注意しましょう。直接触れているとスパークしてしまう可能性があるためです。パッドを直接肌に装着し、下着と重ならないようにします。一昔前までは下着は外すように指導されていたようですが、近年では、パッドと直接ふれていなければスパークする可能性が低いことや、緊急時に下着を外すことよりも一刻も早く救命措置を行ない、突然死から救助すべきという考え方が主流になりました。

また、妊娠されている方にも使用可能です。母体にAEDを使用しても胎児に与える影響は少ないとされており、それよりも母体が心停止している状態が長く続くほうが胎児へ深刻な影響を与えてしまいます。母体にとっての緊急時は胎児にとっても緊急時。母親である女性の命だけでなく、おなかの子どもの命も家庭向きAEDで救うことができるかもしれないのです。

■まとめ

2004年、医療従事者ではない一般人でも操作することができるようになったAED。それから普及が進み、日本で約35万台が設置されました(2012年現在)。マンションにお住いの場合は、マンション全体のものとしてAEDが設置されている場合も多いと思いますが、エントランスまでエレベーターで移動し取りに行かなければならない場合もあるでしょう。AEDが設置されている場所を確認し、「いざという時に本当に使用可能な場所か」確認しておきましょう。心肺蘇生は1秒を争います。そのような緊急時に、家から離れた場所にあるAEDで本当に間に合うか、一度考えてみてもよいかもしれません。

救急車が来るまでの間に、近くにいる家族だからできることがあります。AEDは、いざという緊急時に一緒に戦い、突然死から大切な人を救ってくれる、生存率を飛躍的に向上してくれる強い味方なのです。