「AED」や「心肺蘇生」。テレビドラマなどで見たことはあっても、実際にAEDを操作したり、人命救助の場面に遭遇したことがないという方が多いでしょう。

AEDは誰にでも使いやすく心臓マッサージができるよう開発された機械ですが、実際のところどうやって使うのか?資格は必要ないのか?危ないことなどないのだろうか・・・など、わからないことや不安なことも多いはず。しかし、人命救助の場面にいつ遭遇するのかは誰にもわかりません。

いつか来るかもしれない「その時」のために、今回はAEDの講習を受けられる場所や講座の違い、その必要性などについて考えてみましょう。

AEDの講習はさまざまな場所で実施されている

学校教育の課外活動などとしても活用されている人命救助の体験講習。資格とは異なりますが認定証をもらえるコースもあります。AEDの講習を行なっているのは、日本赤十字社、各都道府県の消防署、AED販売業者など。それぞれの特徴を確認していきましょう。

  • 日本赤十字社

赤十字社では「人命を救う方法や健康で安全に暮らすための知識と技術を伝える」ことを目的に、さまざまな人命救助のための体験講習を行なっています。

救急法、水上安全法、雪上安全法、幼児安全法、健康生活支援講習の5つの講習を行なっており、この中の「救急法」でAEDの使い方を学ぶことができます。この講習は、日常生活の中で起きる可能性のある事故を防止したり、手当の基本として止血方法や包帯の巻き方などの技術や知識を習得することができ、胸骨圧迫、人工呼吸の方法、AEDの使い方についての実技を学ぶことができます。満15歳以上の方が受講することができ、料金は1,500円。4時間程度の講習を体験すると受講証が交付されます。

  • 消防庁

各都道府県の消防本部や消防庁にて救命の教育講習を行なっており、そこでAEDの使用方法を学び知識を得ることができます。ここでは東京消防庁が行なっている救命の教育講習を例に取り上げます。

<東京消防庁での救命講習>

応急手当コース、ステップアップコース、救命講習の指導者コース、救命関連サービス事業の従事者コースがあり、そのうち一般の初心者の人がAEDについて知識を得るのに適したコースは「応急手当コース」。この中の「救命入門コース」「普通救命講習」「普通救命(自動体外式除細動器業務従事者)」です。なお、問い合わせ先は、「救命入門コース」は都内各消防署、「普通救命講習」「普通救命(自動体外式除細動器業務従事者)」の2つは都内各消防署もしくは公益財団法人東京防災救急協会のいずれかになります。

料金は1,500円前後程度。「救命入門コース」は受講証が、「普通救命講習」「普通救命(自動体外式除細動器業務従事者)」の2つは認定証が交付されます。

  • AED販売メーカー

一部の販売メーカーでは、自社取扱い製品のAEDを使用し、心肺停止状態の人がいるという想定での救命講習について、サイト上で案内しています。メーカーによって講習の開催内容は異なりますが、定期的に行なわれている教育講習に参加するほか、企業などの団体であればインストラクターに訪問してもらい実施するというケースもあります。日本赤十字社や消防庁が開催する講習に比べると、料金が少し高くなる傾向があるようです。

講習、講座の特徴を分析。おすすめは日本赤十字社と消防庁

日本赤十字社や消防庁が行なう教育講習の他、AED販売業者が販売機種を用いて講座を実施するなどの種類があります。基本的に無料ではなく、受講費用を支払って講習に参加します。

  • 日本赤十字社

傷病者の状態確認方法や、一時救命処置方法といったAEDの使用方法以外の基礎的な領域の知識も1,500円前後という良心的な料金で学習することができるのでおすすめです。4時間程度の講習を受けると受講証を取得することができ、講習終了後に行なわれる検定試験に合格するとさらに「赤十字ベーシックライフサポーター認定証」を取得できます。資格試験取得のような感覚で勉強できるので、講習を受けて終わりではなく、受講後もしっかり記憶に残る講習となるでしょう。

ただし、AEDの使い方を学べる本格的な講習には制限があり、満15歳以上でないと受講することができません。地域によっては短期講習などが行なわれている場合もあり、その場合年齢制限も設けられていないようです。詳細は、ご自身の該当する地域の講習内容の案内をご確認ください。

※講習リンク先一覧:http://www.jrc.or.jp/search/study-link/index.html

なお、下記サイトでは心肺蘇生とAEDの操作方法について動画で紹介されています。受講する時間がなかなか取れないという方は、まずこちらの動画講座で学ぶのもおすすめです。

※「一時救命処置(BLS)-心肺蘇生とAED-」http://www.jrc.or.jp/activity/study/safety/

※その他、日本赤十字社が行なう講習の案内詳細はこちら: http://www.jrc.or.jp/activity/study/kind/

  • 消防庁

基礎的な応急手当コースから救急関連の事業に携わる人向けの講習など、幅広い講習が用意されています。最も基礎的な応急救護講習以外では、受講証や認定証などを取得することができます。救命入門コースは、小学校高学年でも胸骨圧迫やAEDなどについて学ぶことができるのが特徴です。料金は1,500円前後ですが、サイト上では費用が掲載されていない消防署も多いため、各消防署への確認が必要です。

※東京消防庁「救命講習のご案内」:http://www.tfd.metro.tokyo.jp/lfe/kyuu-adv/life01-1.htm

また、東京に関しては東京防災救急協会という団体でも受講が可能です(応急救護コースと救命入門コースを除く)。月に複数回、平日土日ともに開催されているため、受講しやすい点はメリットと言えそうです。

そのほかの地域の対応については、各消防本部、消防署にてご案内をご確認ください。

  • AED販売業者

AEDの使い方に特化した短時間講習や、蘇生ガイドラインに沿った形で3時間しっかり勉強できるコースなど、メーカーによっては受講コースを選び、希望に適した内容で学ぶことができます。また、メーカーによっては出張サービスも行なっているため、家庭用AEDを購入した際などに合わせて研修を申し込むという場合が多いと想定できます。

ただし、日本赤十字社や消防庁が行なう講習と比べ、メーカーでの講習は費用がやや高い場合が多く(希望者に発行される終了証の取得も、無料ではなく有料の場合があります)、現在市場で流通している家庭用AEDの使い方はそれほど大きくは変わらないため、販売業者による講習を体験することにこだわる必要はないとも言えそうです。

講習を受けないとAEDは使用できない?

  • 資格がなくても使用OK。家庭用AEDにも注目が集まる

以前は医療の知識や資格を持つ人でなければ使用することができなかったAEDですが、2004年7月に、一般市民でも取り扱うことができるようになりました。これは、救命措置はその開始時間に大きな影響を受けることから、人が倒れた時に少しでも早く蘇生活動が行なわれるようにという願いや、生存率向上への期待が込められています。

このことは、AEDが資格を保有しない一般市民でも使えるように進化していることが大きな背景としてあります。ショッピング施設やマンションのエントランスなど人が多く集まる施設でも設置されているのをよく目にするようになっただけでなく、大手ショッピングサイトでも購入可能であるため、個人で簡単に購入できるようになりました。購入にあたって、特別な申請や資格なども必要ありません。価格はさまざまですが、シンプルなタイプで22万円程度から用意されています。

  • 進化するAED。光と声で操作方法を教えてくれる

現在家庭用AEDで主流となっているのが、“サマリタン”と“CU”。音と光で使い方を誘導してくれるのが特徴です。また、AEDが使用可能な状態にあるか、機械が毎日セルフチェックで確認を行なっているという点も安心できるポイントでしょう。

ここで、サマリタンという機種を例に挙げて使い方の概要を見ていきます。

1.呼吸をしておらず心肺停止状態にある人を発見したら、119番の要請をしたのち、サマリタン(AED)を手元に置く。

2.本体の緑色のボタンを押し、起動。

3.音声ガイダンスの指導に従って、対象者の状況確認、電極パッドの種類の確認を行なう。

4.電極パッドを貼り付けると、自動的に電気ショックが必要な状態かを判断。音声に従い、光で誘導される操作方法を確認しながら、電気ショックや胸骨圧迫など救助活動にあたる。

上記の通り、事前に使用方法を知らなくてもAEDを操作することは可能です。使用方法の詳細をお知りになりたい方は、各AED本体の取り扱い説明書などをご確認ください。動画サービス等で紹介されている場合もありますのでおすすめです。

  • 講習は「いざ」という時の安心材料。受けていなくても救助活動は対応できる

このように、必要な行動は機械が指導してくれ、電気ショックが必要な状態かはAEDが判断してくれます。そのため講習を受けていなくてもAEDを取り扱うことは可能でしょう。もちろん講習で実技を受けておけば一通りの流れを把握することができるので、いざという時にAED使用の背中を押してくれることに間違いはありません。少しでも安心感を醸成したいという人には講習はおすすめです。

東京都を例に挙げると、都内各消防署もしくは公益財団法人東京防災救急協会で行なわれている「応急手当コース(東京防災救急協会の場合は「救命手当コース」)の「普通救命講習」を受講すると、AEDの使い方がわかります。3時間で1400円、毎月複数回実施されており、しっかりした内容を良心的な価格帯で受講できるのでおすすめです。

AED販売業者による、購入とセットになった講習会も実施されていますが、無料ではなく有料である場合が多いようです。さらに消防署などの講習会に比べ、費用が高い場合が多いのも考慮したい点。

一般市民が使用するAEDはどの機種も使いやすく進化しており、操作上の大きな違いはほとんどないため、講習を受ける際に機種にこだわる必要はあまりないと言えます。

迷ったら、まずは日本赤十字社や消防庁が実施している講習会に参加されてみてはいかがでしょうか。

AEDの必要性

①多発する自然災害。その時、平常時の救急は期待できない

過去の歴史を振り返ると、平成に入ってから大きな地震や洪水で思わぬ被害が広がる事態がたびたび起きています。記憶に新しいところでは平成28年に起きた熊本地震、平成23年には東日本大震災、平成7年には阪神・淡路大震災など、日本はここ数年だけでも大きな災害に見舞われています。有事の際、通常と同じレベルの救急搬送などの対応は期待できません。ご存知の通り、心肺停止状態になってからどれだけ早く救護活動を始めたかによって、その後の蘇生に大きな影響を与えます。

通常時の救急車到着時間は、平成29年で平均7分19秒。心臓マッサージや人工呼吸、AEDの使用といった適切な処置が施されないまま時間が経過した場合、1分経つごとに10%生存率が減少してしまいます。地震などの自然災害発生時となったら、救急隊の到着時間はもはや未知数。この最初の数分間にそばにいる誰かが救命措置を実施することができるかどうか。それが生死に大きな違いを生むのです。

心肺停止状態は「死亡」とは異なります。蘇生のチャンスを活かせるかどうかは、人命救助の有資格者でなくともそばにいる人の救護活動の対応によって大きく変わるのです。

※詳細:http://www.tfd.metro.tokyo.jp/camp/2018/201804/data/camp4-1.pdf

②高齢社会、目の前で人が心肺停止になる場面に遭遇する可能性が高まる

平成31年1月1日時点で、日本の人口は1億2631万7千人。うち65歳以上の人は3562万4千人となりました。全人口に対して65歳以上の人の人口が21%を超えると「超高齢社会」となるため、今の日本は超高齢社会に突入しているということになります。

さらに、近年異常な猛暑で熱中症で人が倒れることが珍しくなくなりました。そうした状況から、目の前で人が倒れる場面に遭遇し、対応に迫られる可能性も必然的に高まります。前項でもお話しした通り、その時そばにいる人がどれだけ救命活動を行なるかは蘇生に対して本当に重要な意味を持つのです。

※詳細:http://www.stat.go.jp/data/jinsui/new.html

https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/tyojyu-shakai/nihon.html

まとめ

資格は不要で一般市民でも使うことができるようになり、個人購入も可能となったAED。その存在は身近になりつつありますが、実際に使う時のことを考えると不安を覚えるのもまた事実。そうそう遭遇することのない蘇生を行なうという場面で、人命が自分にゆだねられるのですから当然のことです。講習で実技を体験することで得られる一番大きな点は「救助の方法を教えてもらったのだから大丈夫」という、指導者がいない中でも蘇生活動を行なうための「安心感」でしょう。

当然のことながら、人命救助には、AED使用の他にも人工呼吸や止血、異物除去などもあります。そのような点からも、人命救助、心肺蘇生させるプロであり、長い歴史や経験値の高さを持つ日本赤十字社や消防署で包括的な講習を受ければ、高い安心感を得ることができるのではないでしょうか。