新規開拓におけるターゲット選定とリストアップはとても重要です。
どれだけ優秀でトークが上手くても、ターゲティングをミスると成果はあがりません。
マーケティング界隈で「南極で氷を売れるか」という話が上がりますが、そもそも氷を売るのに南極にいくことがナンセンスです。
売れる営業マンは、売れるところに売りにいきます。重要なのはターゲット選定です。
本記事ではターゲットを選定するにあたり、どういう視点でターゲットを定めればいいのか。また具体的な方法をお伝えします。
ターゲット選定をミスるとエライことになります
ターゲット選定は営業プロセスにおける上流部分となります。
上流で間違えればそれ以降のフェーズもすべてコケてしまいます。
新規開拓営業では、仮説をつくり、実行して振り返る、このPDCAをひたすらくり返して勝ちパターンを見つけていくことが成果への近道です。
実際に営業現場では下記のような会話がやりとりされているのではないでしょうか。
『アウトバウンドでアポが取れないなら、トークを変えてみようか、いやインバウンド中心に切り替えてみよう』
『初回商談から提案につながらないなら、資料を変えてみようか、いやトークを変えてみようか、いやアプローチ先を部長ではなく社長にしてみよう』
こういった試行錯誤をくり返しながら確度を高めていくはずが、そもそも上流のターゲティングでミスっていては、後フェーズの試行錯誤がムダに終わります。
数名の営業が動いていれば、二週間で百万円近い金額と時間のロスとなります。
もったいないですよね。
営業プロセスの上流にあたるターゲット選定は、仮説と調査をかさねて少しでも精度を高める努力が求められます。
一方で、実際に営業活動をおこなう中でターゲットが違ったということは当然ありえます。
仮説で100%正しいターゲットを見つけることは不可能に近いと思います。
お伝えしたかったのは、ターゲット選定をミスると損失が大きくなるので、適当にやるのではなくしっかりと仮説だてしましょうということです。
ではどうやってターゲット選定するのかをお伝えしていきます。
ターゲット選定に役立つSTP分析
STP分析は、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの3つの頭文字をとって名付けられた分析手法で、マーケティングによく使われます。
市場を「細分化(セグメンテーション)」して、ターゲット層を「抽出(ターゲティング)」し、ターゲット層に対しての「競合との差別化(ポジショニング)」を明確にすることで、市場における自社の競争優位を獲得できるというものです。
例えば営業研修を提供している会社を例にして、STPを見てみましょう。
セグメンテーション
まずは市場をセグメントしていきます。
やってみていただくとお分かりになりますが複数の切り口がでてきます。
営業研修サービスを例に顧客をセグメントしてみると下記のような切り分けができそうです。
- 「toC営業かtoB営業か」
- 「アウトバウンド営業かインバウンド営業か」
- 「無形商材か有形商材か」
- 「新規営業かルート営業か」
- 「営業の人数」
- 「営業エリア」
どの切り口でセグメントするかは自社の製品やサービスの特徴や営業戦略によって変わりますので、ぜひ色々と試してください。
ターゲティング
セグメントした市場から自社が注力する市場を定めます。これがターゲティングです。
自社の強みを発揮できそうな市場を狙いつつも、収益性や効率性もふまえて適切な市場を選択します。
例えば自社が得意とする研修は「SPIN」という新規の大型商談で活用できる営業スキルの研修です。
かつ講義形式の研修なので、まとまった人数が参加しないと費用対効果で考えたときにペイできません。
であれば「toB営業」「無形商材」「新規開拓」「営業マンが多い大手中堅企業」が狙いどころとなり、だったらまずは大手・中堅のシステム販売会社を狙いましょうとターゲットが固まるわけです。
ポジショニング
狙った市場の中で自社の立ち位置を定めます。
立ち位置を決めるには競合他社の情報が必要です。
自社製品のウリを低価格にしたくても、競合他社でもっと低価格に提供しているところがあれば負けてしまいます。
営業研修会社の事例を用いると、競合他社は営業スキルに重点をおいた研修が多いなら、自社の研修は基本的な営業ビジネスマナーから教えることで「新入社員向け営業研修」を打ち出すことができます。
STPの再検討
このように市場を細分化してターゲット決めて、自社の立ち位置を決めることで、顧客に強く訴求できるというものですが、STPは一度検討して終わりではなく、SとTとPを行ったり来たりしてブラッシュアップが必要です。
お気づきの方もいると思いますが、自社の強みを活かせるターゲットを検討していると想定しているよりもマーケットが小さすぎて市場としての魅力がなかったり、ポジショニングで競合分析をすると自社の強みが想定のものと違っていたりすることはよくあります。
ですので、STP分析は一通りやってみたら終わりではなく、何度か行ったり来たりが必要です。
短期的な成果をあげるためのポイント
セグメントした市場をどこから攻めるか(ターゲティング)を検討する場合、プロダクトや企業フェーズなどによって優先順位は異なってくると思います。
例えば、短期的な売上を重視するなら、購入意欲が高いマーケットを優先的にアプローチすべきです。
もしくは、自社のプロダクトがリリース直後で認知度が低いのであれば、大手企業に導入してもらうことを優先して実績を作ることを狙うことも戦略の一つです。
ここでは短期的な営業成果をあげるために、どうやって購入意欲が高い企業を探し出すのかを具体的にお伝えします。
まずは競合のリプレイスを狙う
短期的な営業成果をあげるのに一番手っ取り早いのは、競合のリプレイスです。
使ったことがないものを購入する際は、慎重に検討して時間がかかってしまいますが、すでに購入したことがあるものは社内の稟議も通りやすいものです。
狙っていくべきは競合他社の製品・サービスをすでに利用している企業、これは間違いないです。
ではすでに競合と付き合いのある企業からどうやって自社の受注に結びつけるのか。
ポイントは、競合と比べて自社の製品・サービスはどこが優れているかを明確にすることです。
またその優れている部分を評価してくれる顧客はどういう人たちか仮説を立てることで、ターゲットとなる企業は見えてくるはずです。
では競合他社を活用している企業をどうやって調べるか。
人材系の会社であれば競合の求人サイトに掲載している企業はわかりますし、広告会社なら他の媒体に出稿している企業にアプローチすればいいでしょう。
人材サービスや広告は顧客が複数社と付き合うケースが多いので、選択肢を増やすということで顧客にアプローチすると受注の可能性はより高まります。
他にはSNSで競合他社の製品を検索してみるとユーザー企業が分かることもありますし、業界誌などに導入事例としてインタビューが載っていることもあります。
競合企業のサービスサイトなどで導入企業一覧がでていたら参考になりますよね。
自社で実績がある顧客の同業他社を狙う
次に狙うのは自社で導入実績がある業界です。
顧客も同業他社の動きは気になるところです。
実績があれば、顧客がどのような課題を抱えていて、それをどうやって解決したのか、を具体的に説明できるので先方も導入イメージがしやすくなりますし、 顧客が社内で決裁をとる際も競合他社が導入して活用できていれば稟議は通りやすくなります。
できれば業界でキーとなっている企業を狙う
上述の同業他社と関連しますが、できるだけ業界内で名が通った企業を狙うほうが後々営業が楽になります。
あそこが使っているなら弊社も使ってみよう、といった意思決定プロセスをふむ企業は依然として多いと感じてます。
例えば、野村證券が使っているサービスなら、ウチもやってみようという証券会社は一定数あると思います。
これは業界最大手という軸になりますが、業界内で先進的な企業軸でも有効となります。
先ほど例にあげた証券業界でも、最新テクノロジーの話であれば野村證券よりもSBI証券のほうがいい事例になるかもしれません。
自社の製品やサービスをもとに、どの企業を狙えばいいのかは社内で議論するといいのではないでしょうか。
(まとめ)
これまで色んな企業で営業代行をやってきましたが、意外と勘でこの企業を攻めてみようという組織が多いように感じます。
もちろん、現場感覚にもとづく勘が当たっていることはよくありますので否定はしません。
できれば勘とロジックを組み合わせて、より確度が高い情報のもとでターゲットを決められれば一番いいのではないでしょうか。
冒頭もうしあげましたが、ターゲティングは営業の上流工程ですので、より効率的に成果をあげるためにも上記をお試しいただければと思います。